出偶えた喜び(5)
会社ではとても充実した仕事をさせていただいて、チームリーダーとして優秀なメンバーに恵まれながら成果を出すことができました。
そんな中で私自身の気持ちが少し変わってきていました。
ちょうど長男が生まれたころですかね。
入社してからずっと電子回路設計の仕事をしてきて、少しはキャリアも積み、チームリーダーになり、それこそずっと全力疾走でやってきました。
そんな毎日の中で「これからどうなるのかな」という漠然とした気持ちが大きくなってきたのです。
40才を過ぎたころ、ふと考えるようになったのは「この会社の中で、5年後、10年後に自分はどうなっているのだろうか」ということでした。
チームリーダーとなったことは大きな変化で、自分自身で手を動かして設計をするのではなく、開発予算や設計工数の管理、人的リソースの調整や、マーケティングや営業部隊との開発計画、顧客との折衝といったことが私の仕事になりました。
それはとても刺激的でした。
とても難しく、でも楽しくもあり、みんなで同じ目標を共有して協力しあってプロジェクトを進めていくのはとてもやりがいがありました。
そして同時に、こんなパフォーマンスはそうそう長くは続けられないと感じていました。
世界でナンバーワンを目指しているやりがいは、より大きなプレッシャーを背負うことでもあったのですね。
毎日、日付けが変わるころまで仕事をして、土曜日や日曜日でさえほとんど休めないような状況を、自分ももちろんですが、なにより部下に強いていることもなかなかに辛いことでした。
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そんなある日、長女の運動会がありました。
生まれてからずっとバタバタと慌ただしかった長女はおかげさまでなんとか元気に成長して小学校に入学していました。
ただ身体的な障害もあって上手に歩けなかったりと、普通の小学校への入学は難しく、無理に入っても本人が楽しく過ごすことは厳しいだろうということで、肢体不自由の子どもたちが通う特別支援学校へ通っていました。
そこでの保護者会などを通して、本当にたくさんの子供たちとその親御さんたちと出会いました。
子供たちはみんないろいろな障害を持っています。
本当に千差万別で、ひとりとして同じ症状の子どもはいないため、できること、できないことがみんなそれぞれ違いますが、それぞれに合った方法で楽しく学校生活を送っているのですね。